佐久の風花・メモリアル

オリジナル短歌&エッセイ&気まぐれ日記

短歌(7/8)

庭師の死

新聞のお悔やみ欄を指しにつつ若き庭師がなにゆゑと母

まさかあの元気な若き庭師がとお悔やみ欄を幾度も見つ

まだ若き庭師の死をば信じ難く問はば殴られ脳挫傷とふ

予期せざる難に逝きたる残酷さ庭師の妻の悲しみいかに

弔問の車列進まず人望の厚き庭師とただに惜しまる

憔悴の庭師の妻の痛々し葬儀の席に肩落とし佇つ

その妻も庭師にて二人きびきびと植木に鋏入れゐし思ふ

殴られて意識無きまま庭師逝くと風の噂は葬儀の後も

2005年06月02日(木) 00時00分

眠れねば

月待てど空はか黒く閉ざされて雪降る気配に身めぐり寒し

肩先の冷ゆるに蒲団引き上げて夜闇のかすかな音を聴きをり

胸底に封印してゐる面影の真夜は生あるごとくもの言ふ

ぞくぞくと背筋を走る恐怖感は何の暗示かくちびる乾く

カーテンの隙間に漏るる光あり覗けば真夜も明るきコンビニ

真夜二時のコンビニに仮眠の幾台がエンジン音を高く響かす

筋ジスの子が呼ぶブザー二度三度夫は疲れて眠りゐるらし

夜の廊を急ぎ来たれば子の痰を夫が引きをり声かけ戻る

2005年04月04日(月) 00時00分

新潟中越地震・スマトラ沖地震

大地震に孤立し全員脱出の山古志村よ雪積みゐむか

結露して住み難き仮設住宅の不安をさびしき笑顔に老いは

幼らは如何にしてゐむ余震未だ続く新潟豪雪の地に

釣り銭の僅かを幾度コンビニの義援金箱に入るるのみにて

被災地の苦労はいかに自宅にも帰れぬ人等の苛立ち思ふ

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震源地はスマトラ沖とふ迫り来る津波の映像見つつ慄く

大津波に呑まれ五日も漂流とふ妊婦の救助に胸なで下ろす

爪を立て牙むき魔物の本性に津波は万の命を呑みぬ

人間はかくも無力か大津波にやすやす呑まれ還らぬ幾万

椰子の木に登り救助さるる幾人と明るき報は朝に相応し

2005年03月02日(水) 00時00分

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著者

ルナ(土屋浩子)

昭和16年生まれ。長野県佐久市在住。昭和48年3月、「短歌新潮」入会、丸山忠治先生に師事。昭和60年12月、第一歌集「風花」を出版。平成19年6月、第二歌集「水辺の秋」を出版。平成20年11月没。

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