佐久の風花・メモリアル

オリジナル短歌&エッセイ&気まぐれ日記

短歌(8/8)

クラス会

白煙を真直ぐにあげて浅間嶺は今日静かなり裾長く引き

常仰ぐ浅間は火の山魔の山と恐れつつゐてあこがるる山

遠目には木目良き浅間も近づけば粗き地肌に人寄せぬさま

クラス会へと車走らす山陰の道は冬色だれも通らず

もしかして山兎かも急坂にアクセル踏めば動く影あり

裸樹多き山の斜面の明るくて山兎そこに潜めるらむか

いつか見し映画のシーンに良く似たる山の急坂愛車に独り

午後四時の集合時間も山裾の湯宿はすでにかげりて寒し

語らひは夜半まで尽きず湯の宿に若かりし師の美貌を言へり

愛称に呼び合ひ語るクラス会の輪にゐて自死のひとりを思ふ

2005年03月01日(火) 00時00分

奏人誕生

九月七日大安吉日第二子が今生まれたと息子(こ)に伝へたり

気管切開して声の出ぬ長男に男子誕生を電話に伝ふ

誕生の直後会ひたる嬰児のをのこよ口をへの字に曲げて

嬰児(みどりご)のふさふさの癖毛はその父とまつたく同じと嫁と笑へり

嬰児(みどりご)の指の長さを嫁言ふに祖母の欲目は即ピアニスト

かなと奏人誕生前より決めゐしと息子(こ)はパソコンに命名を打つ

姉は美音・弟は奏人ふたりとも音楽家なる息子の命名

嬰児の笑みにつられて祖母われも笑みたり平和な時世よ続け

車椅子の父を支へよ嬰児に汝の祖母われはひそかに願ふ

2004年11月02日(火) 00時00分

轢死の少女

ルール守り横断歩道を渡りゐし七歳の児が何ゆゑの惨事

追ひ越しをかけたる無謀な運転者轢死の少女は七歳なるに

家族にて佐渡旅行より帰りたるその翌朝の悲しき事故死

その父母の嘆きは如何に事故死せる朝も元気に家を出でしと

満面に笑み浮かびゐる早紀ちやんの遺影は佐渡の記念の写真

神葬祭のしのび歌奏楽せつせつと続き涙が溢れて止まぬ

玉串を捧げしのび手に柏手を打てば早紀ちゃんの遺影微笑む

いたいけな七歳小学一年生早紀ちやんを返せ生かして返せ

憎みても憎みきれない交通事故悲しみ包み白むくげ散る

2004年11月01日(月) 00時00分

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著者

ルナ(土屋浩子)

昭和16年生まれ。長野県佐久市在住。昭和48年3月、「短歌新潮」入会、丸山忠治先生に師事。昭和60年12月、第一歌集「風花」を出版。平成19年6月、第二歌集「水辺の秋」を出版。平成20年11月没。

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