佐久の風花・メモリアル

オリジナル短歌&エッセイ&気まぐれ日記

短歌(5/8)

検査入院

肝癌になる確率が高き言ふぎよろ目の医師が鬼に見えたり

肝生検の痛みに耐へて臥す吾に同室の患者だれもがやさし

三階の病窓に見る浅間嶺は香煙のごときを細く上げをり

浅間嶺の西側うすき夕焼けに染まりゐたるが青く暮れゆく

点滴の台にもたれて青黒く暮るる浅間を飽かず見てゐつ

病窓に日々仰ぎゐる浅間山こんなにじつくり見るは初めて

店の明かり終夜を点るこの街もかつて辺鄙な村外れにて

2006年05月14日(日) 00時00分

落葉松大樹

手入れせぬ落葉松幾つ墓山の一角占めてゆさゆさと揺る

冬空の雲を掃くがに落葉松の大樹ゆさゆさその枝揺らす

父眠る墓処に夕陽及ぶとき落葉松裸樹も茜に染まる

時ながく夕焼けつづく如月の西空見つつ亡き父おもふ

枝交わす落葉松大樹の逞しさ冷え増す墓処を覆ふがに立つ

烏幾羽からまつ大樹のてつぺんに止まり夕べを何見てゐむか

2006年03月02日(木) 00時00分

異常低温

明日もまた低温注意と報じゐるテレビに佐久はマイナス十度

降りたるは固き根雪となる佐久の風の冷たさ水の冷たさ

エアコンの外機が凍り室温の上がらぬ夜半を満天の星

わが犬ら蒲団にぬくぬく眠りゐて幸か不幸か寒さを知らず

電気毛布肩まで引き寄せ目盛り上ぐ音するほどに冷え込む夜を

2006年01月21日(土) 00時00分

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著者

ルナ(土屋浩子)

昭和16年生まれ。長野県佐久市在住。昭和48年3月、「短歌新潮」入会、丸山忠治先生に師事。昭和60年12月、第一歌集「風花」を出版。平成19年6月、第二歌集「水辺の秋」を出版。平成20年11月没。

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