短歌(4/8)
夏椿
三年前七夕の夜をみまかりし父を思へり夏椿咲く
夏椿そよがす七夕の風に乗り亡き父が来る気配の庭辺
六十路過ぎなほ父を恋ふとうちやん子七夕今宵父の命日
花びらの白に花芯の黄がすがし今年もふんはり心癒さる
花首がぽとりと落つるそれが嫌母がまた言ふ夏椿見て
母疎む夏椿なれどすがすがし白き大輪雨後を揺れをり
ベランダに夕を落ちつぐ夏椿の花姿どれも楚々とうつくし
賑やかが好きな亡父にてわが孫の夕べ歌ふに目を細めゐむ
2006年09月05日(火) 00時00分
サニーの死
品の良きモンローウォークの大型犬サニーの真似に草原歩む
車椅子の子の靴下を夜々脱がす飼ひ犬サニーのつね真剣に
堂々の三十八キロ介助犬の如くサニーは子らに添ひゐつ
いつよりか悪性腫瘍に冒されてサニーは日毎食欲の無く
素直にて少し垂れ目のサニーなり呼べば顔上ぐ死の三時間前
痩せ著き背を撫でやれば眼閉ぢ動かずなりぬサニーよサニー
ひつそりと息ひきとりしサニーにて苦しみ見せぬ死に涙する
戌年に生まれ戌年に身罷りし飼ひ犬サニーの穏やかな顔
ゴールデンレトリーバーの寿命より二年も長きと獣医が言へり
白浄きお骨をサニーの好きな場所楓の樹下に埋めてやりたり
2006年07月11日(火) 00時00分
庭の春
なみなみと水石に水を張り終へて光増したる庭を巡れリ
三月の陽射しゆらゆら明るくて庭に幼の透く声ひびく
移植ごてに何か植ゑゐる母親とかがむ幼の真上を蝶が
紋白蝶行きつ戻りつする朝の眩しさ青くムスカリ点す
目立たねどぞくぞく伸びて花付くる一人静に触るる幼子
錨草のピンクの錨どの辺に降ろさむと日々ゆれつぎゐむか
吾が庭を二分けて咲くすみれにて薄紫と濃きむらさきと
むらさきの薄きすみれは外来種花大きくてその葉も広し
在来のすみれは楚々と樹の下に濃きむらさきの花俯かす
黄にびつしりミニ水仙も咲き盛るその丈わづか七センチほど
2006年05月15日(月) 00時00分