佐久の風花・メモリアル

オリジナル短歌&エッセイ&気まぐれ日記

エッセイ(5/8)

無条件にかわいいもの・・それは孫である。

なぜかわいいのか・・それは責任がないかららしい。

一緒に遊んでいて飽きたら親に返せばよいし、泣いたら、泣いてるよと親を呼べばよい・・と何かの本で読んだ気がする。

確かに困ったら親を呼べば良いのではあるが、しかし一緒にいて怪我でもされたらそれこそ一大事。責任は大ありで、私はいつもどきどきのしっぱなし。

我が家の孫は最近とみにいたずらが激しく・・本人はお手伝いのつもりらしいが、家の中はごちゃごちゃである。

戸棚からものを引っ張り出すのは日常茶飯事、CDをばらまいたり、お線香をぽきぽき折ったり、長靴をはいて廊下を歩いたり。

そんな孫も犬との散歩から帰ると、タオルで犬の足を拭いたりおやつや水をやったりと甲斐甲斐しい。私が干し物をしていると側に来て、干し物を一枚ずつ渡してくれる。

先日は紫蘇の葉を一緒に摘んでくれたし、庭に出ようとするとババのサンダルと言って靴箱から出して渡してくれる。

まだ二歳にも満たない児がと思うが、大人のすることを実によく観察しているのでそら恐ろしくもなる。

よく子どもは親の後ろ姿を見て育つというが、ババも心しなければと孫を見ながら思う此の頃である。

2003年09月01日(月) 00時00分

いっぱし農婦

家の庭続きに畑があって、その管理だけでもたいへんなのに父の畑の一部を貰う羽目になってしまった。

これ以上増えたら草取りができないと文句たらたらの私に、何てぜいたくな罰当りを言うかと友人に叱られた。

言われてみればその通りなので、手のかからない野菜だけを作ることにした。

まずネギ・・これはほとんど植えっぱなしでたまに土寄せをすれば良いのでたくさん植えた。次が豆の類。肥料も要らないし、植えたら放っておけば良いらしい。

そしてトウモロコシ・・これも芽が出て五十センチくらいになったら横目を摘み取って土寄せをするだけとのこと。

それから這い瓜とカボチャはまったく放っておけば良いと言われたので、結局この五種類を作ったのだが、楽だなんてとんでもない。少し見ないうちに草が伸びて農作物の倍近い高さになって風に戦いでいる始末。頑張って草取りをしたら、豆ももろこしも一緒に抜けてしまったり倒れたり・・

草掻きでがりがり草をかったら這い瓜まで切ってしまったりとさんざんな目にあっている。

しかし、しかし・・今収穫のときを迎えて自然の恵の有難さを実感している。今日までにトウモロコシを20本ほど収穫した。

カボチャも瓜もみずみずしくおいしい。

父に感謝しなければと密かに思う親不孝娘ではある。

それにしても草との格闘はごめんだから、来年は畝を広くとって小さなトラクターで草取りをしようと夫と話し合った。

庭続きの畑には、茄子、きゅうり、ピーマン、トマト、いんげん、青紫蘇、赤紫蘇、みょうが、アスパラととりどりの野菜でいっぱい。こちらも毎日食べきれないほどの収穫で、近所の方にあげたりして私は今年いっぱしの農婦である。

あっ、このごろ収穫したジャガイモは別の畑に母と共同で作ったのを忘れていた。この畑には大根と野沢菜を播かなければならない。そう思っただけで頭が痛くなってきた。

農家が嫌いで勤め人の妻になったのだけれど、気がついたらすっかり農業をしている。蛙の子はやはり蛙か・・・。

2003年08月17日(日) 00時00分

息子一家と電気店へ

三月のある日曜日、息子夫婦がオイルヒーターと電気釜を買いたいと言うので、リフト車の運転手兼孫の子守りで一緒に行くことになった。息子の妻はリフト車は大きいからバックがしにくいと言うので運転はいつも私か私の夫の仕事である。

その日は三月には珍しく風のない暖かな日であった。

私は運転しながらヘアードライヤーが故障しているのを思い出しそれもついでに買って来ようと思った。

孫はチャイルドシートに神妙な顔をして乗っている。車が大好きなのでお利口にしていて助かる。

十分ほどでお目当ての電気店に着いた。

息子は人工呼吸器を装着しているので、吸引器やその付属品が多く、それらをキャスター付きのトラベルバッグに入れて引くのだが、慣れないとこれがけっこう難しい。

息子夫婦はまず電気釜を見ていたようだが、気に入ったものが無かったらしく、オイルヒーターの売り場に行った。

時期はずれなのでだいぶ値下がりしていた。三種類だけしか無かったがまあまあなのがあってそれを購入することにした。

そこで私の出番とばかりにさらに値引きを言うと、人の良さそうな店員が困ったような顔で、これが精一杯ですと言った。

私がそれじゃ店長さんに聞いて見てと言うと、素直にはいと答えて奥にひっこんだ。やがて戻るとではこのくらいにと値段を示した。言ってみるものだなと私はにやり。

息子夫婦はあきれていたが、安いほうが良いに決まっている。

それから私は孫を連れてヘアードライヤーの売り場へ行った。

行ってみて仰天した。その種類の多いこと、値段もピンからキリまであってどれを選んで良いやら困ってしまった。

店員に聞くと売れ筋はこちらですと、何やらシースルーのようなヘアドライヤーを指差した。う〜ん。こんなのが流行かぁと驚いたが結局お薦めを買った。ついでに犬用もとピンクの派手派手も買い込んだ。さてまた例の値引きと言うやつを・・・と品悪く少し負けてよと言うと、これが精一杯でと、先程の店員と同じことを言った。でもさっきオイルヒーターも買ったし、電池も買ったしとつぶやくと、わかりましたそれでは消費税分を引きましょうと値引きをしてくれた。しめしめとまたにやり。

店員にとって私はきっと嫌なお客だったに違いない。うふふ。

そのあとがたいへんなことに・・・

店員と値段の交渉をしている間に一歳五か月の孫が、何とヘアードライヤーの値札を全部かき集めて、山のように手に持っていたのだ。私は慌てて店員にぺこぺこ謝りながら戻そうとしたのだが、どれがどれやら一つもわからない。

そうこうしているうちに、別のお客さんが、このドライヤーはいくらですかと店員に聞いている。店員も数が多いのでどれがどれやら困って、値札の束をトランプを広げるみたいにぱらぱら広げて、あっ、あった、四千円です、などと答えている。

孫にお兄さんにごめんなさいをしなさいと言うとぺこり頭をさげた。店員もしかたなさそうに笑ったので私はほっとした。

さあ、あっちに行こうねと孫の手を引こうとしたら、何と今度は静電気防止の手袋を持っている。いったいどこから持って来たのだろうと見回すと、女店員がにこにこしながら孫にティッシュの袋を渡しながら手袋と交換をした。あっぱれである。

小さい子はただ取り上げると、わあわあ泣きわめくので代わりの品物を渡したのだ。店員教育が良くできていると私は感心した。

もうこの電気店にはちょっと来られないねと息子に言うと、値切ったしねと笑われてしまった。

そのあと、息子夫婦に美味しい海老ドリアをご馳走になって、私にとっては良い日曜日であった。

2003年03月30日(日) 00時00分

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著者

ルナ(土屋浩子)

昭和16年生まれ。長野県佐久市在住。昭和48年3月、「短歌新潮」入会、丸山忠治先生に師事。昭和60年12月、第一歌集「風花」を出版。平成19年6月、第二歌集「水辺の秋」を出版。平成20年11月没。

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