佐久の風花・メモリアル

オリジナル短歌&エッセイ&気まぐれ日記

短歌(1/8)

台風九号

台風は夜半過ぎとぞキャスターの美声に怖さ薄らぎてゐつ

異様めく風の動きが不意に止みそれより夜闇の静もり深し

台風の前の静けさを実感し背筋に恐怖の戦慄はしる

がたがたとガラス戸叩き樹々を打ち台風夜半を激しさ増しぬ

荒れ狂ふ台風九号ときをりを静もり更に勢ひを増す

呻くがにすすり泣くがに台風は夜を占め魔物のごとく窓打つ

がりがりと北側に不意の高き音もしや物置が倒壊せしか

近年に無き台風の強さにて疾く過ぎ去れと祈る他なし

2007年09月24日(月) 21時17分

「水辺の秋」出版記念会

わが家に「水辺の秋」の出版を祝ふと歌友が集ひくれたり

本部より小山師と歌友三人の参加もうれし八月三日

歌の師と友の祝辞を有難く聴きゐて胸にこみあぐるもの

身の内を洗ひざらひに詠みきたる「水辺の秋」を素直と歌友

赤き薔薇ピンクの百合の香も共に出版記念の花束をうく

出版の祝ひの膳も美味にして歌友の気配り胸に沁み入る

わが歌集「水辺の秋」は拙くもたからものなり傍らに置く

2007年09月24日(月) 21時00分

六月の庭

午前四時を鳴く郭公に起されて覗く外の面は早も明けそむ

ピンク濃く虫取りなでしこ咲く庭の明るし幼ふたりの声も

また雨になるらし雲の層厚く庭も暗みて葉ずれしきりに

庭石の陰にあやめの遅れ花が咲きゐてむらさき雨に際立つ

蛍袋の花茎長きを行き来する蟻の動きの執念めきて

気管切開して声の出ぬ父親に帰宅の幼の報告つづく

山野草ばかりの庭に異質めくサルビアなれど朱華やげる

幼好む可憐な花も幾つ植ゑ咲き出せば園へと小さき手に摘む

2007年09月24日(月) 20時46分

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著者

ルナ(土屋浩子)

昭和16年生まれ。長野県佐久市在住。昭和48年3月、「短歌新潮」入会、丸山忠治先生に師事。昭和60年12月、第一歌集「風花」を出版。平成19年6月、第二歌集「水辺の秋」を出版。平成20年11月没。

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